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Vol.22 高原便り2「生物と多様性」
軽井沢野鳥の森でトンボの観察会に参加した後、ふとこんな考えが浮かびました。もし高度な知能を持つ地球外の生命体(宇宙人?)が宇宙船に乗って地球を訪れ、地球上の生物を調べたとしたらどうでしょうか?

 たいへん高い知能を持つ彼らのことですから、おそらく地球の生命活動の本質を難なく突き止めると考えられます。すなわち次の2点です。
1.生命活動の本質的なすべての情報がデオキシリボ核酸(DNA)という分子にコード化(記号化あるいは暗号化)されており、そこで用いられているのはたった4種類の塩基であること。
2.生物の見かけ上の多様性は、生命活動に意味を持つ最小の単位である遺伝子(ゲノム)の複製を、最も効率的に行うという目的のためであること。

もちろんこのような事実は、進化生物学の発展のお陰で、人類がここ50年ほどの間にようやく手に入れた知識です。

 ところでDNA分子の違いは、サルとヒトでも意外に少なくほぼ2%ほどです。このようにDNA分子のほんの僅かの違いで、これほどの多様性を生むことができた生命の有り様は実に驚異的です。けれども、ここまで圧倒的に環境に適応している人類の秘密はどこにあるのか、というさらなる問いを彼ら宇宙人たちは当然持つはずです。 ヒトという種間のDNA分子の違いは平均してわずか0.1%ですから、多様化という点では昆虫ほどの進化・適応はしていないはずです。

その秘密は人類に高度に発達した脳(ブレイン)にあることが、彼らにはすぐにわかるはずです。われわれ人類の無限とも言えるバリエーション(個性)は、脳の特殊な性質が産み出したものです。つまり、外部からの入力に応じて無限のバラエティーを持った出力が可能だという脳の機能です。脳が外部からの入力に応じ、様々な出力を見いだすという働きは「学習」と呼ばれます。人間の多様性は、このような脳の特殊な機能に基づく、「意識」あるいは心の多様性そのものにあると言えます。

 地球という惑星がすべての生命保護区であることを、宇宙人たちに対し説得力ある方法で理解させることにより、「地球のいきものじっくり観察会」を終えた彼らが、サンプルとして捕まえた人類を含む様々な生物を、やさしく草の上に放してから帰りの宇宙船に乗り込むことを、心から願わずにはいられません。



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