AK Co.

Season'sTips


Back number
Vol.8 虹の穴
5歳になった息子と虹の話をしていると、いきなり「虹の穴ってあるよ!」と教えられた。虹は穴から出て、その穴は虹が出る瞬間に消えてしまうと言うのだ。どこかにぽっかりと虹が出る時だけ出現する「虹の穴」のイメージが強く印象に残る。

虹の七色や空の青さなど、光のさまざまな物理的性質に基づく色の世界は、実に興味の尽きない世界だ。光の3原色は赤・青・緑からなり、ほとんどの色はこれらの混ざり具合を変えることによって作り出すことが出来る。ところで身の回りの色のほとんどは色素によるもので、これは絵の具やカラープリンターのインクなどに代表されるように、特定の光を吸収することにより目に見える色である。つまり光の「吸収」や「反射」といった性質に基づく発色といえる。 虹イメージ

光イメージ
これとは別に、光の「干渉」や「屈折」などの性質に基づく様々な発色メカニズムも自然界に存在する。代表的なものは、昆虫のモルフォ蝶やタマムシの羽、あるいは熱帯魚のネオンテトラなど。さらに生物以外ではシャボン玉の虹色や真珠の輝きなどもそうだ。例えばモルフォ蝶の強烈なコバルトブルーは翅表の鱗粉にある規則的な構造に由来する。目に見える光の波長は、青色吸収光で480ナノメートル(0.000048cm)という小さいものだ。このような光の波長よりもさらに細かい規則構造に基づく発色メカニズムは「構造色」と呼ばれ、100年も前から物理学者の関心を集めている。近年では「環境にやさしい色」として、化粧品業界はもとより様々な分野からも注目されている。

ところで雨上がりなどに空に架かる虹の七色は、大気中の水滴がプリズムとなり太陽光が屈折することにより現れる。子供が教えてくれた「虹の穴」とは、我々の目の前に自然が持つ神秘的な美しさが瞬間立ち現れて、隠された「構造」を示唆してくれることを暗示する言葉のように感じられてとても魅力的だ。実際に自然科学に携わっていると、こういった瞬間を何度も体験することがある。


home

禁無断転載・リンクフリー (c) AK Co. All Rights Reserved.


home