AK Co.

Season'sTips


Back number
Vol.13 プール熱
5月にリンゴ病に感染して大変ひどい目にあった私は、現在大流行中のプール熱に戦々恐々である。幼児がプールを介して感染しやすい病気の一つで、感染源のウィルスに対するワクチンがないため有効な治療法がないというところはリンゴ病と一緒だ。7月から保育園ではプールが始まり、連日の炎暑から子供にプールを禁止するのも酷だし、あとは運を天に任せて免疫力のみ高めるべく早寝早起に努める毎日。7月からは毎朝のラジオ体操も日課にしている。これでもらってきたらしょうがないとあきらめるしかないか、そう思っていた矢先、予想もしなかったことに夫が妙な咳をはじめた。 イメージ

これが夜中眠れないほどの乾いた咳なのだ。絶対に「マイコプラズマ肺炎」に違いないと思いこんでまた色々と調べてみた。マイコプラズマは自己増殖可能な最小の微生物であり、ウィルスと細菌の中間に分類される。細胞壁を持たないためいわゆる細菌に対する抗生物質は効かないが、一部のタンパク合成阻害剤は有効とのこと。

イメージ
そうか、壁を持つということは有利なようで弱点になるのか、と感慨深く想う。このところ私は、人間の色分け・仲間分けに繋がるような、あらゆる意味の「一神教」の弊害に深い憂慮を抱いている。私たちが一生続けていく様々な「学習」の真の目的は、自分の外にある論理的体系を理解することだ。これを広い意味での「道心」と言っても良い。しかしその体系が、単なる梯子(道具)の役割を超えて、人間の差別化や、選別に繋がりやすい性格を持つことも事実だ。いわゆるパラダイムやイズムにとらわれることの弊害はすべて、この体系自身に単なる梯子以上の目的を持たせようとすることにあるのではないか。 

もちろん何かその体系を形付け、他との区別を付けるための「壁」があった方が、その体系を学習する上では有利なことは確かだ。しかし本来はウィルスやマイコプラズマのように細胞壁を持たず、自分のコピーを残すことのみでその目的を達成したと満足できるような、ミームとしてのパラダイムが、人間の論理的思考力を極限まで発展させるという理性の目的には有利なのではないだろうか?もちろん宇宙(世界)は理性にとって了解可能であるということが、第一に前提であることは言うまでもない。

夫の咳は幸いにも3〜4日で快復した。太古の細菌が立派に生き延びていることからも、知性を獲得したことは必ずしも進化的に優位であるとは限らない。けれども私は次の言葉が好きだ。
『人類を誕生させたことにおいて、進化的な過程は、どうやら宇宙の歴史を通じて最初のそして1回かぎりのことのようだが、おのれ自身を意識するようになったのである。』---テオドシウス・ドブジャンスキー

イメージ


home

禁無断転載・リンクフリー (c) AK Co. All Rights Reserved.


home