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Vol.19 とげとげの葉
 我が家は数十世帯が住むマンションにあります。同じ保育園に通う子供を持つ世帯が、いつの間にか我が家を含め5世帯に増えました。4月から皆小学生になり、学校は違ってしまったのですが、もちろん近所で顔を合わせるとすぐに意気投合して遊びだすたのしい仲間達です。

イメージ  先日私の父がうちに遊びに来てくれました。夕方6時近くに私が帰宅すると、マンションの1階ホールで息子が友達とチャンバラごっこをしています。はたしてそこに父の姿はありませんでした。息子に、もう夕飯だからうちに帰ろうと言って部屋に戻ると、孫のつきあいでへとへとにくたびれた父がリビングでノビてしまっているのでした。父はこの4月からはりきって、孫の面倒を一週間に一度見ると申し出てくれたのでしたが、初日にしてこのていたらく・・・。安心して留守を任せるには、やはり父の寄る年波を考えなくてはと、私も考えを改めさせられるような複雑な気持ちでした。

イメージ  それからなんとなく気分が重くなってしまいました。その夜はそのまま寝たのですが、翌朝起きると私はやたらに機嫌が悪くなっていました。イライラの原因が自分でも解らないまま朝食の支度をしたのですが、せっかく暖めたパンプキンスープの味付けに失敗し、塩辛くなってしまったのがきっかけで、私のイライラが朝食のテーブルで大爆発。「こんなしょっぱいスープはだめだっ!!(自分のせいだけど・・・)」それきり朝食を食べる気もおきませんでした。
 こどもは危険な臭いを嗅ぎ取ってとても気を遣っています。「僕にはこのスープおいしいよ・・・」と私の顔色を見ながらけなげにも残さず食べています。夫はと言えば、「たまに朝飯つくったくらいでイライラするなよ!」と勘違いして怒り出す始末。とりあえずこどもには、夕方勝手に友達の家に一人で遊びに行かないことをもう一度大声で言い渡し、朝の送り出しをすませました。状況をうすうす理解した夫は出掛けしなに、「あまりおこらないほうがいいよ。もういいじゃん。」と私をたしなめながら、こどもとエレベーターに乗って降りていきました。
 私はどうも、人に物を頼みたくない、あるいは身内や近所づきあいの人間関係にあまり踏み込みたくないという無意識の心的傾向を持っているようです。人に世話になったり、何か頼み事をしたりすることがとてもストレスになってしまいます。これはいったい何故なのか?単に人に世話になると、そのお返しに何かしなければと思うことが理由とは思えないのです。反対に、「人生助け合い、迷惑の掛け合い、それが生き甲斐」というのが日頃の私の口癖でもあります。

イメージ  車を運転して研究室に向かう途中、片側3車線の国道の中央分離帯にヒイラギのような植物が植えられていました。信号待ちの間その葉を見ていると、周囲がやたらにギザギザ・トゲトゲしています。新芽が黄緑色に出始めているのもやはりトゲトゲです。「こんなにとんがって、よっぽど食べられたくないんだなあ。いいじゃん食べられても〜」そう思ったとたん、まるでその植物が自分のように思えて笑ってしまいました。
 食べられないよう敵をトゲで遠ざけて、何とかうまく生き延びようとしているその植物くん。同様に、世間とうまく協調していくことをどこかうっとうしく感じてしまう私。どちらも同じしがらみに縛られているのです。植物は自分のDNAを少しでも多く次世代に伝えようとするしがらみ。私は、自分本来のの自由な精神的DNA(自己複製子)を何とかして形にしようとするしがらみ。些末なことにこだわる方がよっぽどバカバカしいように思えて、とても気持ちが軽く晴れ晴れとして来たのでした。



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