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Vol.50 バクテリアでデトックス

ネコ隊長は小学5年生です。最近しきりに生き物を飼いたいと言い始めています。うちのマンションでは犬や猫などのペットを飼うのは禁止なのですが、メダカなら飼えるよ!飼おう飼おう!とさかんに言いつのります。理科の授業でもメダカの観察をしたらしく、メダカに関していっぱしにあれこれとうんちくを披露します。中には私もへぇ〜とびっくりすることもあります。たとえば金魚鉢のように丸い水槽では、外の世界が異常に拡大して見えるので魚の飼育には適さないだとか、雄の腹びれは平行四辺形で、雌は三角形で切れ込みがあるのだとか。

実は私も小学生の頃メダカを飼育して、観察記録を夏休みの自由研究にしたことがあります。生まれた卵がすべて大人のメダカに食べられてしまい、とてもがっかりした思い出があります。

そこで思い切って世田谷区にある大工センターにメダカを買いに行くことにしました。なぜ大工センターなのかというと、たまたまネコ隊長の同級生がそこでメダカを買ったことがあるというだけの理由です。10匹300円と書いてある厚手のビニール袋に入ったメダカをみて、ネコ隊長は大喜びでどれにしようかじっくり選んでいましたが、私は最近の飼育用グッズの方が興味深く、水槽や外付けの濾過フィルターや泡の出るタイプのフィルターなど、さまざまな種類があるのに驚きました。何も研究してこなかったため、とりあえず「かんたんメダカ飼育セット」というアクリルの水槽にフィルターと下砂や餌がセットになっているものを購入しました。家に帰り、説明書を読みながら慎重に水道水の塩素を中和して小さな水槽に入れてみました。メダカは元気に餌を食べるので、ついついやり過ぎてしまうほどでした。フィルターはポンプで水を吸い上げて、濾過したあと噴水のように水面上にある排水口から流して循環させるのですが、この水音が水琴窟のようにさわやかに響いて、リビングルームの趣が一変してしまいました。

ところが翌日帰宅してみるとメダカが3匹死んでいるのです。さすがにネコ隊長も悲しかったらしく、二人で遺体を埋めた後しばらくしんみりしていましたが、生き残ったメダカの数を慎重に数えていたネコ隊長が大きな声で、「8匹いるよ!1匹多かったんだね!きっとお店の人がオマケしてくれたんだよ!」と叫ぶのを聞いてから、一気に元気を回復しました。この日からしばらく、私は水槽の水のにおいがやや気になり出したのですが、1日おきに水替えをしてみてもなかなか改善しないので、これはやはり専門家の話を聞かなければならないと思い立ち、近所にある熱帯魚屋さんを調べて次の日曜に出かけることにしました。

そのお店は「水景工房」といって、うちから自転車で行ける距離にあるのですが、まだ20代と思われる店長がひとりで切り盛りしているちいさなお店です。私たちが訪れた日曜日は家族連れなど4,5組のお客さんがいて、対応するのにてんやわんやという感じです。しかし店長の魚に関する知識は膨大で、どんなことでもまるで立て板に水を流すように滔々と説明してくれるのです。私がまず驚いたのは、店内にあるたくさんの種類、たくさんの魚がいる水槽のどれ一つとして、水がにおったり濁ったりしていないことです。そしてたくさんの種類の水草が育ち、蛍光灯の明かりに照らされて、ゆらゆらと何ともいえない神秘的な風景を創り出していることでした。 

店長のアドバイスは、まず餌をやり過ぎないこととバクテリアを加えるということでした。メダカは買ってきた後少なくとも2日間は餌をやってはいけないのだそうです。さらにバクテリア!これには心底驚きました。確かに水槽内の余分な有機物を分解・処理するにはバクテリアは必須でした!それがかわいい瓶詰めになって2千円弱で売っているとは!実に目から鱗です。それから、しっかりと下土に根を張った状態で売られている水草。水槽に置くだけで育ち、蛍光灯は波長が730ナノメートルのものを1日最低10時間は点灯すること、こうして水草が育つことで酸素が水中に放出されます。彼の説明を聞きながら、私の心の中のスクリーンには太古の地球に初めて植物が誕生し、大気の組成を劇的に変え始めた何億年も前の海辺の風景が、映画を見ているように再生されはじめ、たった6リットルの簡単飼育セットの水槽の中に、バクテリアと植物とメダカが共生するミニチュア生態系が組み上げられていきました。そうだバクテリアと水草を買って帰ろう!

その日からバクテリアを加え、水を1日おきに1/3量ずつ換えるという作業をくりかえし、およそ1週間ですっかりいやなにおいや濁りはなくなりました。すごいぞバクテリア!そして水草はあっという間に水面を超えるほどの背丈に生長しています。それで突然に思い出したのですが、かつての同級生の女友達が先日ランチしたときにつぶやいてた一言、「最近おしっこがだめなのよね・・・」です。彼女は医者なので、おそらくそこには深いうんちくが込められていたのだと思います。けれども私がとっさに連想したのはメダカの水槽のフィルターです。フィルターはポンプで水を吸い上げて汚れを濾過しつつ循環させるのですが、これが水槽の立ち上げ時には思うように機能してくれなかったのでした。バクテリアが必須だったのです。人体をメダカの水槽にたとえてみれば、このフィルターの働きこそが「おしっこ」の本質です。腎臓でしっかり毒素をこし取り、おしっこに効率よく溶かして体外に排出する、そういう私たちの健康をしっかり裏から支えてくれるはずの働きが、加齢とともに衰えてくるのは避けられないのでしょうか。私は彼女の本意が何なのか、食事中だったこともあって遠慮して詳しく聞けませんでしたが、自分の体験から推し量れば、水を積極的に飲んでたくさんおしっこを出しても、肝心の解毒、つまり今はやりの言葉で言えば「デトックス」が追いつかない。どうしたら、砂漠で暮らすラクダたちのように、少量の水分に効率よく毒素を溶かし込んで排出することができるのだろう?じつにラクダはそのような特技のおかげで、あの乾燥した砂漠でも生きていけるそうなのです!

水景工房で飼ってきたバクテリアの小瓶を振りながら、「これ飲んだらどうなるかな?」とふと思いましたが、せっかくのバクテリアでもいきなり飲み込まれては、胃酸にほとんど殺されてしまい、デトックスに協力してくれるようには思えないのでそれはあきらめました。その代わりに私が思い出したのは、いつかテレビで見たのですが、ギリシャだかエジプトだか、大変乾燥した地域に暮らす家族の食卓に、毎日山盛りのタマネギが積まれていて、その家族は当たり前のようになまのタマネギを朝からもりもり食べている!という風景です。

前回のコラムでも紹介した平和堂漢方薬局の根本先生は「水毒」とおっしゃっていましたが、体の水分代謝が滞ることで様々な病気につながるそうで、私が今年5月から2ヶ月以上毎日めまいが止まらないのもそのような水毒のひとつの現れなのだそうです。くわしくは平和堂ホームページのコラムをご参照ください。そして改善のためにはやたらに水を飲むのではなく、タマネギのように水分代謝をよくする食べ物を積極的にとることがよいそうなのです。

バクテリアは私のからだの中でも、腸をはじめさまざまな器官できっと今も、一生懸命デトックスしてくれているはずなのです。そのバクテリア君たちにしっかり感謝しながら、タマネギをせっせと千切りにして生姜ドレッシングにあえて食べている毎日です。バクテリア万歳!

メダカ飼育これまでの経過
 
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