勝手に気炎を上げることを、「おだをあげる」といいます。 昨夜は金曜日で、私は家で盛大におだをあげていました。
あいにくパパが留守のため、息子が数学の宿題をやりながら、いやいや相手をさせられていました。
聞けば息子自身、さきほどまで中学校でおおいにおだをあげてきた様子。
一昨日、数学の教科書を学校に忘れたため宿題ができなかったので、私に雷を落とされたのが不満で、友人たちと「学校に1秒でも長くいたい。家に帰りたくない!」という意見で一致したと言うのです。
おそらく「母親がいつもごちゃごちゃうるせ〜んだよ」などと言いあって、互いにさぞかし鬱憤を晴らしていたのでしょう。
ところがその友人たちのうち一人だけは、「僕は家が1番いいな。」というのでびっくり!その子の話を聞くと、「やることさえやっちゃえば家は天国だよ。」というのだそうです。その子の家では、お父さんやお母さんや妹さんとの会話がいつも明るく弾んでいるらしいのです。
「それはかなり珍しいタイプだよ。」と、私。
「でも僕はなるほどな〜と思ったよ。それで僕もこれからはやらなきゃならないことを、毎日ちゃんとやることにしたんだ。それほど量も多くないんだしさ。」
「それは大変殊勝なことです。さすがオトナ〜」
あくまでイヤミな私の言い方にイラッとしたらしいむすこは、無言で数学の宿題を続けていました。
「そもそも思春期になって、うちが一番いいなんて言ってるヤツは、生物学的におかしい!」
夕食のおでんとビール、その後さらに赤ワインも加わっているため、私の独断と偏見に基づくおしゃべりがとまりません。
「どんな動物だって、ある程度成長すると、親と血まみれの縄張り争いになって家族から追い出されるのが普通だよ。まあ、サルなんかは、メスは群れに残ってオスだけ追い出されるみたいだけどね。人間はどっちかといったらサルに近いのかね?メス化したサルなのかな?それにしても、家が一番なんて言ってるヤツがいずれパラサイト予備軍になるんじゃない?私なんか中学校の頃から、1日も早く家を出て一人暮らしがしてみたいと、ずーっと思ってたけどなぁ。」
昨夜はワインで前頭葉がふっとんでしまっていたためおもいだせなかったのですが、今朝になって考えてみると、私が一人暮らしをしたいと思ったのは、必ずしも家族の干渉や束縛から逃れたいがためではなく、自分で自分の生活を仕切る!これが一番の目的だったと思うのです。
まさしく生物学的理由です。
そもそも私の家族はあまり子供に干渉するタイプではなかったです。母は様々なサークル活動に夢中で、毎日飛び廻っていましたし、父は突然自分の研究がしたいと言って、地方大学へ単身赴任していました。
束縛ということでは、経済的理由が最大のものでした。例えば大学受験のときは、授業料の安い国立で自宅から通える範囲の大学で、というのが経済的理由から絶対条件でした。私はかの湯川博士にあこがれて、京大の物理学科に進学したいという希望をこっそり持っていたのですが。それには下宿しなければムリでしたし、もちろん学力に自信がなかったので、とても自分から言い出せる雰囲気ではありませんでした。
以来30年という年月があっというまに過ぎました。今の私が断言できるのは、子供は1秒でも早く親元を離れた方がよい、ということです。理由はただ一つです。苦労して自分の生活を自分で仕切ること、脳を鍛えるにはそれしかない!と確信するからです。
その意味で、息子は期待通りの成長を遂げているといってよいのかもしれません。でも、「家よりいやなところはどこにもない」と、面と向かって断言されるとさすがに寂しいものです。その寂しさの反動から、ついつい干渉したくなってしまう気持ちをぐっとこらえて、今日も楽しく元気におだをあげよう!と決意をあらたにしています。