今朝も部活の自主練に早朝から出かけるため、AM5:20に起きた息子は小さな声で「弁当つくって」と言って私を起こします。早起きするのはとてもえらいと思うのですが、それにしても朝は機嫌がやたら悪く朝食もろくに食べないのはどうしてなのでしょうか?私は寝起きに機嫌が悪かったことはかつてないので理解できないのですが、夫に聞くと自分もそうなのでよくわかると言います。頭の血の巡りが悪いせいでしょうか?そういえばせっかく作った弁当を持って行くのを忘れたことも二度や三度ではありません。
息子は「反抗期」と自称していますが、話しかけてもろくに返事もせず、ガラの悪いおじさんのような低い声でうるさそうに「あぁ」とか「いや」とか、まるで家族とのコミュニケーションに割くエネルギーを最小限に切り詰めようとするかのような態度にはいつもイラッとします。その一方で同級生のひとりと1週間に500通以上のメールを携帯でやりとりしていたのが発覚し、あえなく携帯電話使用禁止となりました。しかも土曜日の午後その友人と神保町に楽器を見に行くと嘘を言って、実際には渋谷の繁華街をうろついていたのです。何故嘘がばれたのかというと、「学校の遠足でお土産を買ってこなかったから、お詫びにかわいいマスコットを買いました。」などといって、あきらかにゲームセンターのUFOキャッチャーで取ってきたぬいぐるみを私に渡したことがきっかけです。一見巧妙そうに嘘をついていますが私からすれば、「おととい来やがれ」的な稚拙なレベルです。妙な嘘の背景に、かなり後ろめたい嘘が別にあるな〜とすぐにピン!と来ます。母の勘は鋭いのです。
心を造るってそんなに大変なのね〜と私も懐かしく思い出します。そういえば中2、中3時代私は毎日ムカついていました。ムカつくという言葉は私たちが10代の頃(1980年前後)にとても流行った言葉でした。今は何というのか知りませんが、とにかく見るもの聞くものすべてに反発心をおこしてやたらにつっかかる、おとなが一様に汚い生き物に思える、ほっといてほしい一方で注目を集めたいと熱望する、そういった一連の心理状態です。それでも家族や先生にあんなに悪い態度をとったかなぁ?と、数十年前の記憶をたどるのですが、おそらくそうだったのでしょう。
そんなある日、ふと古いビデオを新しいコンピューターに読み込もうと思い立ちました。息子が生まれて以来撮りためたビデオは、ミニDVテープに録画したまましまい込んでいたのですが、Macとビデオカメラをつなぐケーブルを買い、外付けの大容量ハードディスクに読み込もうと思いついたのです。最近のハードディスク価格の下落には目を見はるものがあります。これならバックアップのさらにバックアップも簡単にできます。0才からの5年間で60分テープ20本以上の記録があるのですが、全部いっぺんに作業するのは大変なので、とりあえず家族旅行などのビッグ・イベントから読み込みを開始しました。
ところがびっくり仰天! 4才の息子のかわいいことといったら!これはいったいどうしたことでしょう?!当時そんな風に感じたことはちっともなかったように思うのですが・・・。そんなはずはない?確かに当時もかわいいとは思っていたのでしょうが、そんなことはこのところの彼に接していて、すべて記憶から抜け落ちてしまっていました。4才の頃の息子は、ちょっとかすれた天使のような声(!)で私にたどたどしく話しかけてきます。「うわ〜これはたまらん!」と私の目はパソコンの画面に釘付けです。うさぎのポッチより断然カワイイ!何故かというと人間の言葉をしゃべるからです!?
「ちょっと見て〜これ!カワイイでしょ〜!!」と、部活から帰った息子を捕まえて画像を見せたところ、「へぇ〜なつかしいじゃん」としばらくながめた後で、「よく覚えてるけど、当時は俺、ムリしてかわいくふるまってたよね。そうしないと育ててもらえないと思ってさ。」などと言っています。「へぇ、そうなの?私もストロング・スタイルの母親に育てられたけど、そういう記憶はないなあ。」と私。「いや、なんだかんだ言っておばあちゃんはさ、ママよりもやさしいから。」・・・何それ?私へのあてつけですか?突然現実に引き戻されてむっとする私。
天然に持って生まれて備わっていた心を、いったん全部ばらばらにした後で、またひとつひとつ自分で選んで再構築する作業を経て、歳をとった今につながる心を造りあげる。それが思春期にさなぎのようになってしまった彼らがやっている大仕事なのだ、と何かの本で読み、なるほどな〜と納得したことがあります。心を造るというのは、即ち脳を造ると言うことです。最近DNAや遺伝子ネットワークの研究にのめり込んでいる私には、息子の神経細胞の中で遺伝子たちが場所を変えペアを変え、環境に新たに適応しようとシャッフルを繰り返している様子が目に浮かぶのです。
目下のところ自称「悪人」の息子ですが、「やっぱりあの頃はかわいかったねぇ〜みてみて!」と、また10年後に今の家族のビデオを編集しながら私は思っているのかもしれません。