土曜日は朝7時ちょっと前にパパに見送られてねこもん(息子:仮称)とふたり元気に家を出る。荷物は大きなスーツケースをねこもんが引っ張り、私はショルダーバックひとつ。品川から成田エクスプレスに乗る。4年前、家族3人で乗った思い出が懐かしい。そういえばねこもんのパスポートはそのときつくったのだが、まだ小学5年生の時の写真のままなので、これではまるで偽造パスポートだよ!と言って笑う。面影は残っているが、私の目からはまるで今では別人だ。出入国検査でひっかからないかと心配になる。
成田に近づくと、窓からの田園風景は梅雨時期の濃い緑がしたたるほどで、熱帯的な印象を受ける。空港で2時間以上時間があったので、ねこもんと何か食べようということになり、空海というラーメン屋でねこもんはとんこつラーメンを注文する。朝食にとんこつラーメンとは、かなりテンションが上がっている証拠だ。私もモーニングサービスとメニューに書いてあるつけ麺を注文する。しいていえば、確かにさっぱりした朝食向きのつけ麺だった。搭乗する予定のボーイング787は先月に運行再開したばかりで、このところ毎日のようにトラブルの報道があるので、定刻に出発できるのか怪しんでいたけど、電光掲示板を見ると大丈夫そうだったのでひとまず安心する。
出国検査所を過ぎてからは人も少なく空港は静かだった。搭乗を待つ間、BSテレビがプレミアムリーグを中継しているのをねこもんは熱心に観ていた。ちょうどマンチェスターUの香川が得点したので感心する。ねこもんはサッカーが好きで、自分のiPod Touchの待ち受け画面を、私の知らない外国人サッカー選手の写真にしている。
時刻通りに搭乗開始。機体の中はまだ新品の匂いがする。ビジネスクラスのシートを見て、ねこもんは「広いね!」と感動していたけど、エコノミー・シートに座って「狭いね!」とさらにびっくりした様子。窓のシェードがなくて、スイッチの操作で窓ガラスの色が透明から濃い青に変わる仕掛けになっているので、ねこもんは何度も色を変えておもしろがっている。私は問題のバッテリーがあがってしまわないか心配になる。ドアを閉めてから1時間ほどしてようやく離陸。成田空港はやっぱり過密なのだ。はやくもおなかが空いてきた。つけ麺を食べてきて正解だった。
シートベルト着用サインが消えたので、さっそくトイレに行って部屋着に着替える。ひとつだけ広いトイレにたまたま入ったら、便座の横に跳ね上げ式のベンチがついていたりして、ずっとここにいるのが一番楽かもしれないと思う。映画を観はじめるとしばらくしてようやく食事になる。食後はずっと目の前の小さな液晶モニターを観ている。前の人がシートを倒すと、画面が顔の前15cm程とかなり近くなるのがやや難点だった。私は以前から観たかった『最強のふたり』を観る。画面は見やすいがヘッドホンがうまく頭に固定できず、音が聞こえにくい。いつものことだけど飛行機の中はかなりの騒音だ。
私は映画は1本だけにして、ちょっとでも寝ようと目を閉じていた。ねこもんは1時間ほど寝ただけで、あとはずっと映画を観ていた。斜め前のアメリカ人ビジネスマンが、ノートパソコンでずっとプレゼン用の資料をパワーポイントで作っていた。みんな元気だなぁ!
最初の4時間はすぐに過ぎ、次の4時間はようやく過ぎ、最後の4時間はさすがにつかれてくる。それでも途中何のトラブルもなく、揺れもそれほどでなく、気づいたらアラスカを過ぎて、カナダ上空にいた。着陸2時間前に再び食事が出た。くまもんヌードルと焼きおにぎり。デザートはカスタードケーキ。丁寧に食べ方を説明したくまもんが印刷されたカードがついてきた。例のアメリカ人ビジネスマンもくまもんヌードルをふつうに食べていた。よほど旅慣れているのだろう。その後モニターで電子書籍のタイトルをみていたら、その中に萩尾望都の『ポーの一族』があり、懐かしくて夢中になって読んでいたのであっけなくボストンに着陸してしまった。