入国審査は土曜日のせいか係員が3人ほどしかいないのでかれこれ1時間以上時間がかかる。空港の外に出るとさすがに案内表示がすべて英語で、シャトルバスの乗り場を探すのに苦労する。活字が目を素通りしてしまって脳に達しない感じなのだ。バス乗り場は何人か人が集まっていたのでなんとなくそれとわかる。バスで地下鉄の乗り場まで行き、まずチャーリーカードというチャージ式のプリペイドカードを買おうとしたのだが、それは売り場のある駅が決まっていて空港駅では買えないらしい。旅行者は当然空港駅で売っていると思うはずだ。これは意外だった。
切符自動販売機の近くの窓口にいたお兄さんは親切に、販売機の前で悪戦苦闘してる私たちの様子を見に出てきてくれた。アメリカ人は親切だなぁ。あまり役に立たない親切が多い気もするけど。その脇を3人のアメリカ人旅行者の親子が、「1枚のチケットで改札を団子になってすり抜けて行ったよ!」とねこもんがびっくりしていた。ずるい家族だ。ボストンの地下鉄には降りるときに改札がなく、自動ドアから出るだけなので、いったん入ってしまえばこっちのものなのだ。例の親切な窓口のお兄さんは、これといって見とがめる様子もない。
ようやくチケットを買いブルーラインという地下鉄に乗る。この地下鉄がいかにもアメリカ的で、ギーギーと凄い騒音を立てながら、発車も停止もお世辞にもスムーズとは言えない加速・減速で、そのたびに立っている乗客はあちこちの棒をあわててつかまなければならない。車内はそれほど汚くはないが、やたらに段差が多く実に無骨な印象。グリーンラインに乗り換えるために降りて振り返ると、一番後ろの車両に運転席があり、運転手は黒人の女性だった。まるでブルドーザーを操縦するような高い運転台から、こちらをちらっと見下ろしたのでちょうど目が合う。運転士と言うより、まさに「操縦する人」だ。
Hynesという駅で降りる。地下鉄はどこまで乗っても片道$2.50だ。地上に出たら快晴で日差しが非常に強く目が開けられないほど。ボストンの緯度は北海道の室蘭と同じくらいだということを思い出す。太陽の高さが予想より低く感じる。まだ昼過ぎだというのに。
ようやくホテルのあるBeacon通りにたどり着く。その通りは両側に街路樹が濃く茂っており、実に静かで落ち着いた雰囲気なのでうれしくなる。川に近く風もさわやかだ。建物は、何故こんなにくっつけて建てたのかと思うほど、一連に連なった煉瓦造りの、いずれも地下1階地上4階建てである。私たちの泊まるホテルのすぐ近くで売りに出ていた部屋を、あとでネットで見付けたところ、1880年築と書いてあったので、築後130年以上経っているのだ!
歩道から玄関まではどの建物も一様に4mほど引っ込んでいて、そこは小さな庭になっている。ホテルのある建物はすぐに見つかった。インターホンを押すとオートロックを中から解除してくれるので、その間に重いドアを押して入る。内側にさらにもうひとつドアがあり中に入るのに一苦労する。とにかくバリアリッチだ!受付にはアルバイトらしい黒人の若い男性がひとりおり、部屋がまだ掃除中だといって鍵だけ渡してくれた。はたしてそれは親切なのだろうか?午後1時にはチェックインできるとあらかじめメールで確認したのに。しかもすぐに全額の宿泊代が前払いで払わされるのには驚いた。
あとで気づいたが奥にボスらしい白人の、年令40代くらいの両腕に入れ墨のある太ったおじさんがいて、バイトの受付のお兄さんはおどおどと彼に非常に気を使っていた。あのおじさんが支配人だろうか?仕方ないので荷物を預けて食料品店を探しに行く。あらかじめGoogleマップで見当をつけておいたので、すぐDelluca’sという店は見つかったが、サンドイッチが11ドル以上するので買うのをやめる。さらに歩いて行くとCafe Jaffaという店があったのでランチに寄る。給仕のバイトのお兄さんが親切でチャーミングなのでとても嬉しい。本当に素敵な青年だったなあ!女給仕はみな中近東系の美しいおねえさんたちだ。トルコ人だろうか。この店は、後で調べたら中近東料理を出す店で、Kabobサンドイッチが10ドルくらいだった。私の注文したTuna Rollはサイズ巨大だし味は実に美味しい。素材がよいのだ。何よりコーヒーがうまい。Rollは半分しか食べられなかったので夕飯に持って帰る。お兄さんに言うとホイルで包んでくれる。非常に感激した私は2ドルのチップをはずんだ。実はたったの200円相当だけど、お札で払うとたくさん払った気になるから不思議だ。ふたりで20ドルのランチだった。