昼食後私だけいったんホテルに戻り、また旅行記を書き始める。たった今、今日も帰りが遅くなることに気づいて受付のお兄さんに鍵のことを聞きに行ってきた。ちょっとコツがいるけど玄関のドアもあくことがわかった。合い鍵なのでうまく回らなかったのだ!チェックインの時教えてくれればよかったのに! この日デスクにいたお兄さんは、チェックインの日にいた人です。
そんなやりとりをしていてわかってきたのだが、結局このホテルは、オーナー(持主)はどこかの金持ちで、例のマッチョな両腕に入れ墨のあるボスのおじさんは、管理会社に雇われた管理人で、その下に様々なバイトのお兄ちゃんや若いお掃除のお姉さんが働いている、という構図が見えてきた。バイトにホテルの運営に熱意を持てという方が無理というものだ。部屋のタオルを替えといてね、と朝言って出たのに、4回のうち3回は忘れていて、夕方もう一度受付に頼みに行く必要があったのには閉口した。それでも受付のお兄さんは、3回目には「すみませんでした。」と謝っていた。私が「別にいいですよ。」と笑って答えたところ、その後から私にやたらに気を遣ってくれるようになった。ねこもんにそう言うと、「あの日本人、怒ってないような顔して、実は腹でものすごく怒っているんじゃないかと心配になったんじゃない?」と分析していた。そんなこともあるかもしれない。ねこもんは英語がまったく話せないわりには、周りの状況をよく見て観察している様子なので感心する。
夕食後はYoron IsraelのJAZZコンサートに出かける。昨日とは違ってチケットを受付で発行してもらう必要があった。参加者の家族は無料でチケットがもらえる。それもそのはず。このYoronさんはBerklee Percussion科の副主任で、演奏家としても大変有名な人だそう。ピアノ、サックス、ベース、ドラムの4人の演奏は、知的な深さを感じさせるYoron先生の人格を反映させた、微妙で、繊細で、しかも温かいバンドだった。スティービー・ワンダーの曲を編曲したはじめの2曲で、私は十分に満足して深い感動を覚えた。この日は最近出したばかりの"VISIONS"というCDからの曲を演奏していた。やっぱり音楽は人間のものだという実感。高貴な精神を感じる。機械に使われているという印象の昨夜の演奏とはえらい違い!
ふたりとも感動してわーわー話しながら帰ってくる。このコンサートを聞いただけでも十分来たかいがあったね!などと話す。「それ考えたら学費安いよ!」とねこもんが叫ぶ。私は「あんたが払ったんじゃないし・・・」と言う言葉をぐっと飲み込む。途中でMarboro Marketという酒屋に寄り、ペプシとビールなどを買って来る。なぜか選んだのはミルウォーキーの缶ビールだった。この日はドアはすんなり開けられた。部屋でビールを飲んでさらに盛り上がり、シャワーを浴びて寝たのは12時をまわっていた。
この夜はじめて一度も目が覚めず、朝まで熟睡できた。不眠症を治すとはやっぱり音楽の力は偉大だ!(つづく)