今日は天気も完璧だし、海に行こうと思っていたけど、どこに行こうかあれこれ思案していた。ボストン市観光局のホームページで、サウスボストンにJohn F. Kennedy Library(ケネディ大統領記念館)があるのをみつけて、ここに行ってみようと思う。
地下鉄グリーンラインをPark駅でレッドラインにのりかえてJFK/UMASS駅で降りると、無料の送迎バスが循環している。7日間無料の地下鉄乗り放題切符を買ったので、できるだけ地下鉄を使わないともったいない。レッドラインのSouth駅には大勢の学生が乗り降りしていて、どうやら近くに学生街がある様子だった。地下鉄の車内広告を見て、語学学校のポスターがあったのでメモする。病院の広告が多く目につく。まもなく目的地につく。
まず記念館の建物が実にかっこよかった。湾に面していてモダンアート美術館のような趣。12ドルの入場料を払って中にはいると、まず17分ほどの映画を見る。ケネディ大統領自身のナレーションで、彼の生立ちや学生時代の様子が紹介され、マサチューセッツ州選出の下院・上院議員を経て大統領選に立候補するまでのエピソードが、いろいろな映像で示される。映画は大統領選までのエピソードで終わる。私は、キング牧師との関わり合いや、暗殺にまつわる陰謀説にも興味があったのだが、そのへんは映画では全く触れられていなかった。
映画のあとで展示室に入る。とちゅうでようやくキング牧師や公民権運動のことが紹介され、「私には夢がある」というキング牧師の例の有名な演説のハイライト映像が見られた。展示の最後近くに、暗殺の日のテレビニュースの報道映像があった。壁に埋め込まれた3台のモニターで同時にニュース報道が再生されている。それを見ると、やはり暗澹とした気分になる。しかも展示にはなかったけど、この次の年にはキング牧師と、さらには弟のロバート・ケネディ司法長官まで暗殺されるのだから、日本でいえば幕末に新撰組が暗躍した時代のような雰囲気だ。しかもその後もアメリカの大統領は、レーガン大統領にいたるまで、未遂も含め何度もテロにあっているのだ。
暗殺やテロ、この容易に解決できないアメリカの病は、どこに根ざすんだろう?その疑問に答えるためには、原住民のアメリカ・インディアンを暴力で追い出しながら、白人のための街や都市をアフリカ系黒人奴隷を手足にして拡大して来た、この国のそもそもの出発点まで立ち返って、問題をひとつひとつあぶり出していくという根気のいる作業が必要だ。しかも、その問題の根っこをもし明らかにできたとしても、果たして実効的な解決方法が見つかるかどうかも、だれにもはっきりとイエスとはいえないのだ。
たまたまホテルのケーブルテレビで、アメリカ大陸を発見したコロンブスを英雄視する歴史観を見直そうという、研究者や教育現場の動きを紹介するドキュメンタリーを放送していた。はたしてコロンブスは、アメリカ建国の祖として単に白人の視点から英雄視されるべきなのか?少数民族の側から見たら、侵略者であり非情な殺戮者ではなかったか?という内容だった。現代のアメリカ人も歴史から真剣に学ぼうとしているのだ。
帰りの地下鉄に乗っている時、アメリカでのテロの深刻な状況は、地球にすむすべてのヒューマン・ビーイングまたはホモサピエンスの産みの苦しみではない?という声が聞こえる。空耳だろうか?アメリカの病を十分に病むこと。これが、おそらく人類の進化の過程に必要不可欠な道筋なのかもしれない。現代のアメリカ病から人類全体がいつか卒業しなくてはならない、と強く感じる。
Hynes駅に戻りあわてて待ち合わせ場所に行くと、ちょうどお昼でねこもんが校舎を出てきたところだった。またCafe Jaffaに行く。行くたびに、この店は店主や店員の人柄がよい「貴重」と言っていい店だなぁ、と感じる。チップはきっかり10%を加えて伝票で示し、はっきり説明してくれるトルコ人らしい笑顔の美しい女店員。こうすればだれも文句なくチップも払うと思う。しかも支払いにクレジットカードが使えるのも便利だ。
ホテルに戻ると、夏の観光シーズンに備え、庭の植え込みをしていた。今日は夜に備えて電話を借りておこう。そしたら9時以降はダメといわれる。わたしは電話の子機なんて盗みませんよ!と言いたいのをぐっとこらえる。