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下敷き実験
2006/07/12 Wed. 14:27
私が小学校2年生の頃、本で読んだのか大人から話で聞いたのかは忘れてしまいましたが、地球は丸いと言うことを初めて知りました。地球は丸いというこのアイディアは、当時の私にとても素敵な印象を与えました。私はそれを何とかして自分なりに確かめようと思いました。そして「下敷き実験」というのを発明しました。それは、プラスチックの下敷きを片手に持って空気を切るようにすると、必ず下敷きは空気の抵抗を受けてまっすぐには進めず、すこし上向きにたわんだ軌道を描きます。私はこのことを、地球が丸いためその周りにある空気層も丸くなっており、そのために下敷きがたわむのだと解釈しました。この思いつきにすっかり満足してしまった私は、地球表面の曲率などを検討することもせず、すっかり得意になって友達に実際にやって見せて説明したりしたものです。

もちろん、これはまったくちんぷんかんぷんの思いつきでした。現在小学校2年生の息子にこの話をしたところ、「地球がそんなにちっちゃく丸まっているわけないじゃん!」と大笑いされてしまいました。確かに彼の言うとおりなのです!

ある現象に対して、特定の理由を説明するようなアイディアがあったときに、それが本当にそうなっているかをチェックする方法を考え出すのは意外と大変なことです。あるいは、特定の理由を説明する理論に対して、それが間違っていることを証明する方法も、理論が複雑であればあるほど骨の折れる仕事になります。人間の頭は、いくらでも勝手に様々な理屈をひねり出すことは得意ですが、その理屈をひとつひとつ検討してつぶしていくためには、大きな忍耐力を必要とするように出来ています。わたしたちは、できれば手っ取り早く「信じたい」のです。答えが見つかる前の宙ぶらりんの状態がとても居心地悪く感じるように、そういうふうに頭はできているようです。

人間の歴史を振り返ると、そのようなちんぷんかんぷんの思いつきが捨てられたゴミの山だらけです。あるいは、現在生き残っている理論も、しばらくたてばそのようなゴミため行きの運命にあるかも知れません。自然科学に限ってみても、これまでに考えられた理論の圧倒的多数が間違いでした。むしろ、そのような間違った理論に白黒をつけるセルフチェック機構を持つことだけが、科学の唯一のとりえなのです。巨大な疑いのプールを泳ぎ切った理論のみが生き残ることができ、しかもそれはおそらく期限付きでしかないのです。 

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