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放射線の話(2)
2005/08/31 Wed. 12:35
地球の中に埋まっている天然の放射性物質は、ウランやラジウムなどですが、これらがもつ放射能の寿命はほぼ地球の年齢と同じくらいながいので、まだまだ十分たくさんの放射線を出すことが出来ます。さらに空からは宇宙線といって、とてもエネルギーの高い放射線が毎日降り注いでいます。

現代文明を支えている主要なエネルギーは、いまや電力です。ウランなどの放射性元素を人工的に壊し、そこからエネルギーをとりだす方法が、原子力発電と呼ばれる技術です。日本など資源の乏しい国では、今後ますます主要な発電技術となるかもしれません。ここで問題なのは、天然のウランが燃えると、その燃えかすも放射性物質になることです。発電すればするほど、原子力発電所の中に、これらの燃えかすの放射性物質が、どんどん蓄積されてしまうのです。さらには、その燃えかすの放射性物質が出す放射線量は、もとのウランよりもずっと多くなってしまうのです。

あるいは、現代の技術を支えているものに、人や物資の輸送の高速化があげられます。これはもちろん、ジャンボジェット機の登場で急速に普及しました。今では普通の人が、一生のうちに何度も海外旅行をしたり、フランス産のワインをたくさん安価に手に入れたりすることは、当たり前のことになりました。けれどもここで問題なのは、それらの航空機で勤務する人たちが、宇宙線を地上にいるときよりも余分に浴びてしまうと言うことです。最近になってようやく日本でも、機上乗務員の人たちが勤務中に浴びても良い放射線量の、おおよそのガイドラインを決めようという動きになってきているそうです。

自然放射線にしても、アスベスト(石綿)にしても、それが人体にダメージを与えるということはわかっていても、いつ・だれに・どのような健康被害が生じるのか、はっきりとは断言できません。熱いものにさわったらやけどをする、というような即時的な傷害ではなく、遺伝情報への、あるいは新陳代謝の際にからだの細胞が分裂して増えるような場面への影響が主であり、それがその人の、例えば30年後の健康状態に、具体的にどのような影響があるかということは、たいへんに複雑な問題です。そのため、現代の科学や医学のレベルでは、確率的に予測するのが精一杯なのです。

ところで、1960年代末までの大気圏核実験によって、わたしたちは海水や地表や大気中に、たくさんの放射性物質をばらまいてしまいました。それは100万キロワット級の原子力発電所に貯まっている、燃えかすの放射性物質に換算すると、1万基分以上にもなるそうです。それが地球全体に今もふわふわと漂っているのです。

ちなみに、アトピーやアレルギーなどの自己免疫疾患には、さまざまな白血球種類のバランスが深く関わっているらしいということが、最近になってわかってきました。それらと、ここ50年ほどの間に人工的に増えてしまった、余分の放射線の影響とが、どう関わっているかなどは、わたしたちにはまったく未知の、今後の研究課題だと考えられます。

人間はまだまだ十分に賢くなってはいないのです。何かの技術が開発されて、「これは便利だ!あ〜良い世の中になった!」と手放しで喜ぶことは、少なくとも50年間ほど留保する必要がありそうです。

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