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クジラの宇宙観
2006/04/25 Tue. 12:02
今年はクジラの当たり年のようです。日本近海のクジラは冬に沖縄周辺など暖かい海域で出産し、春に子供を連れて日本海側あるいは太平洋側の2ルートを通って北上するそうです。報道によれば、佐渡島周辺での今年1月から4月のクジラの目撃情報は15件で、すでに昨年1年間の約7割に達しているとのこと。また島根県隠岐の島近くの海域も、今年に入って13件もの目撃情報があるそうです。

クジラはなんと1000万年も前から地球上で生きて来た生物です。種の存続という観点からすれば、ほ乳類の中で最も成功した生物のひとつでしょう。ちなみに人間は地球上に現れてからまだ20万年しかたっていません。

ところで私はこの2ヶ月間ほど、物理学最先端の宇宙論の本を大量に読みすぎ、消化不良を起こしています。そのあげく「クジラに会ってクジラの宇宙観について聞いてみたい。」と家族にやけくそ半分で訴えています。けれども、「クジラに知能があるはずないから、クジラの宇宙観などそんなモン、存在しない!」と逆に怒られてしまいました。しかし、本当にそうでしょうか?

感覚器官が違えば脳の情報処理の仕方が大きく違うはずで、人間のような社会を作らないから、あるいは道具を使わないからと言って知能がないということにはなりません。もちろん食物連鎖の頂点に立つものが、必ずしも知能が高いわけではないでしょう。肉食か草食かということは、進化の過程でほんの偶然に起こった習慣の違いでしかないのです。

一方、クジラの情報処理システムを人間の情報処理システムへと翻訳する手段がまだないため、1000万年かかって創られたクジラの宇宙観をたとえ目の前に差し出されたとしても、そこから人間である私が意味のある情報を得ることは、おそらく出来ないはずです。

ところで、人間は眠っている間に夢を見ます。けれども、どんなに楽しくても同じ夢をもう一度見る方法は知られていません。夢にはほとんど再現性がありません。この再現性のなさが、わたしたちが夢から意味のある情報をほとんど何も引き出すことが出来ない原因です。どんなに荒唐無稽な夢を見る能力があっても、その人の知能が高いとはおそらく誰も言わないでしょう。夢の内容を再現性のあることがらと関連づけ、それを翻訳して初めて、わたしたちは夢から意味のある情報を得ることが出来るはずです。

いつかわたしたちが自分の夢を翻訳出来るようになれば、わたしたちはクジラの「知能」から意味のある情報を引き出せるようになるかもしれません。それがクジラの「宇宙観」でないとは、誰にも断言できないはずです。

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