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音の話
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2005/11/29 Tue. 17:35
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わたしが小学校3年生の頃だったと思いますが、初めて自分の声をテープで再生して聞いたときに、それがあまりに「汚い声」だったのにビックリ仰天したことがあります。
学校で教わった唄を、その当時ようやく一般に出回り始めた「ラジカセデッキ」なるもので録音したのでしたが、自分が普段自分の声だと思っているのとあまりに違って聞こえるので、はじめは機械が壊れているのだと思いました。けれども周りで話している、父や母の声は普段とそれほど違っていないため、「私の声は他人にはこんなふうに聞こえているのだっ!」と、それはそれは大変なショックを受け、しばらくは人前で歌ったり話したりするのがイヤになるほどでした。
ところでわたしたちが音を耳にするとき、どんなことが起きているのでしょうか?
何か音がするときには、必ずどこかで何かが振動しています。人が声を出すときには、主に声帯やくちびるなどが震えています。そのようなものは音源と呼ばれます。音源の振動がまわりの空気中にいる分子を揺り動かし、その分子の振動が次々に隣の分子に引き継がれ伝えられて、音源を中心に分子の振動が四方八方へ伝わっていくのです。
空気中にはものすごい数の分子が存在します。それらが次々に振動を伝え始めると、分子がごちゃごちゃたくさん固まっているところ(密の部分)と、その反対にまばらにばらけているところ(疎の部分)が空気中に交互に生じます。その様子は「ビジュアル物理」のページ(http://www.ne.jp/asahi/tokyo/nkgw/gakusyu/hadou/tate-yoko-wave/wave1.html)などで実際にアニメーションとして見ると、とてもよくわかります。
空気中での、そのような分子の疎密の分布を音波と呼びます。つまり音波とは、空気中の分子が疎や密に配置された全体をさしています。もちろんそれは時間とともに絶えず変化して行きます。また、音波は空気中を1秒に340メートルの速さで伝わっていきます。ちなみに、台風のときの大風でも1秒間に40メートルそこそこの速さですから、これはかなりのスピードです。もちろん1秒間に3億メートル進む光に比べれば、はるかに遅々としたものではありますが。
空気中の分子が次々に振動を引き継ぎ、最終的にわたしたちの耳の鼓膜のすぐとなりにいる分子が振動を始めると、その分子はそのいきおいで鼓膜をたたきます。空気の密な部分にある分子は鼓膜をたくさんたたきますが、反対に疎な部分にいる分子はあまりたたきません。鼓膜はまわりの分子にたたかれ自分も振動しますが、その振動の幅が大きいと音は大きく感じられ、反対に鼓膜を少ししか揺すらない音は小さく感じられます。鼓膜の振動パターンは、最終的に電気信号として脳に運ばれ、それでわたしたちは音がしたと認識するのです。ちなみに鼓膜が何かの原因で揺れない場合でも、その近くの骨自体が震えることでも音は感じられます。
ところで、自分の声を録音してスピーカーを通して再生したのを聞くときと、じかに自分の話し声を聞くときとで、声がかなり違って聞こえるのは、自分の直接発する声は、鼓膜はもちろんそのような骨の振動としても直接脳に送られて処理されるためだと考えられます。
私の場合、スピーカーを通して聞いた自分の声が、自分で直接聞いているものより「汚い声」であることは、どう解釈したらよいのでしょうか?私の声の主要な要素が、骨伝導でしか伝えられない性質のものなのでしょうか?
いずれにせよ「何かが欠けている」ということは、美の絶対的な要素である「調和」を損なう可能性があるとだけは言えるようです。
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