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パンの話
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2005/10/21 Fri. 11:45
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ふんわり柔らかでしっとりしなやかなパン。かみしめるほどに味が出るモチモチのパン。そのおいしさの秘密は、原料となる小麦粉に水を加えてこねた時にできる、<グルテン>にあります。
グルテンは、それぞれタンパク質である<グリアジン>と<グルテニン>がまざってできるものです。グリアジンは納豆のように糸を引くねばねばの性質を持ち、グルテニンには弾力性があります。ひと口に小麦粉と言っても、産地により、あるいは畑により、そこに含まれているこれらふたつのタンパク質の割合が違うのです。相異なる性質を持ったふたつのタンパク質が、人間の手でこねられて絡まり合ってグルテンになります。そのまざり具合によって、ふわふわ感だったり、モチモチ感だったり、あるいはコシのあるしなやかさなど、様々な風味を出すのです。これは小麦粉の種類はもちろん、水や塩などの配合バランス、さらにはもちろん生地のこね方でも決まります。
グルテンは、イーストの発酵によって発生する炭酸ガスを含んで、大きく膨らんだパン生地の体積を支える、屋台骨のような働きをします。ねばねばと弾力の両方の性質をあわせ持つので、とても複雑な立体的(三次元的)網目構造をとることができます。この屋台骨はオーブンで焼くことで、さらにしっかり固まります。またパン生地に加えられる塩は、サイコロのような形をした結晶ですが、多少の熱を加えてもその構造が変形することがありません。そのため、塩もパンの屋台骨を支えるのに一役買っているようです。
話は変わりますが、以前宮城の米どころで育った人に聞いたのですが、同じ産地の同じ農家でも、田んぼによってできるお米の味が違うのだそうです。田んぼの日当たり、水はけ、風通しなどの条件は、もちろんそれぞれに違います。あるいはその結果として、雑草取りなど農家の方の手間がどれだけかけられるかも変わるでしょう。お米が育つ環境は様々であり、けっして「どこどこ産」などの一筋縄でくくることはできないのです。
おいしいパンをかみしめるとき、あるいは炊きたてのおいしいお米に感動するとき、わたしたちは毎年変化する畑や田んぼの環境と、そこにかけられたあらゆる人の手間の数々を同時に味わっているのですね。
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