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星砂の話
2006/07/24 Mon. 15:01
沖縄旅行から帰った友達から小瓶に詰めた「星砂」をおみやげにもらったのは、もう今から20年も前の話です。以来私は、てっきり星砂は珊瑚のカケラが砂になったものと思いこんでいました。先日お台場にある日本科学未来館で、「星砂」を研究している方から説明をしていただき、初めてそれが生き物の殻だということを知りました。それは「有孔虫」といって、たったひとつの細胞からなる透明な体を持つアメーバーのような生き物でした。有孔虫は貝のように炭酸カルシウムで出来た殻を作りますが、その形は星形やお日様型、巻き貝型など実に様々です。

顕微鏡で星砂を見ると、殻はラメ入りのレース編みセーターのようにキラキラしており、形はちょうどスナック菓子の「おっとっと」にそっくりなふくらみを持っています。小さな穴がたくさん開いていて、これが「有孔虫」という名前の由来でもあります。この穴から足をたくさん出して、浅い海底の藻などにくっついて生活しているそうです。その隣の顕微鏡には、「太陽砂」という有孔虫の1種がありました。こちらの殻は真ん中が丸くて、周りにちょうど太陽の光線のような角が四方八方に飛びだしているのです。その角はちょうどエノキ茸の先端のようにやはり丸みを持っています。

星砂も太陽砂も、大きさや角の数などは実に様々です。中にいるアメーバー君が成長するに従って、どんどん殻が精巧に仕上げられていくからだそうです。何と言っても驚きなのは彼らの増え方です。いつもはたったひとつの細胞でしかないアメーバー君が、ある日突然たくさんの細胞に分裂します。それが殻に開いているたくさんの穴から一斉に飛び出して、それぞれが新たに殻を作るのだそうです。後に残されて空になった殻や、死んでしまった殻がたくさん浜辺に打ち上げられて、「星砂」として採集されるのです。

顕微鏡で星砂を見ると、どうしても砂糖菓子の金平糖を連想してしまいます。金平糖はもちろん生き物ではなく、芥子粒などに徐々に砂糖をまぶしつけていくとあの形ができあがります。ところで金平糖は必ず24本の角を持ちます。

生きている有孔虫が作る星砂と金平糖の形の複雑さの違いは、「いのち」があるか・ないかの違いでした。たったひとつの細胞でも、いのちのあるものはあのように無限の複雑さを持つ形を発明することが出来るのですね。

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