再び話は前日にもどる。
無事ねこもんの演奏も終わったので、会場進行役の背の高い先生に聞いて、U君のいるfusionクラスの発表会場に行って見る。U君は那覇に住む高校2年生で、単身生まれて初めてアメリカに来て、英語が全くわからず不安で、初日のオーディションの時、私ら親子に「日本人の方ですか?」と話しかけてくれた青年です。このクラスはメインのBerklee Performance Center (BPC)という一番大きな会場で発表会をやっている。プログラムをもらうと、fusion, marinba, worldの3クラス合同発表会で、生徒数はやはり50名ほど。マリンバクラスの4人の合奏がとてもまじめで、Rockクラスと対照的でおもしろい。U君の出番は早かったので、残念ながら彼の演奏は聴くことができなかった。
さらに別の建物にある1Aという会場に行ってみる。ここはJazzとFunkのクラス発表会場だ。進行役のYoron先生が、それぞれの演奏者に励ましや、暖かい賞賛の言葉を送っている。その様子を見ていると、この人は本当に音楽を愛しているということがよくわかる。そして若い人に音楽を伝えることも。演奏家としてだけでなく指導者としてもすぐれているそのような資質を持つ音楽家は希有だと思う。ねこもんはYoron先生にすっかり心酔してしまったようで、Yoron先生の弟子になるにはどうすればいいか?とそればかり話していた。先日の演奏会で聞いた彼の新作CDを早く聞きたいとも言っていた。
最終プログラムの修了式に行く。Percussion課の主任と副主任が、様々な質問に答えるという内容。やはり2週間後にはじまる5 Weeksの内容に関する質問が多く、できれば奨学金をもらってBerklee音大に入学したいという希望を持っている参加者が多いのがわかる。5 Weeeksという夏期コースは、その名の通り5週間のコースで、最終日にオーディションがあり、それに合格した人(10名ほど?)が奨学金を受け取れるとのこと。それにしても奨学金をもらうのはとても狭き門だ。実際、Jamセッションでねこもんが出会ったfusionクラスの黒人の高校生は、このあと5 Weeksにも参加予定とのことで、後日奨学金を受け取った人の記念写真にも載っていた。この人、ものすごくドラムうまかった!とねこもんが舌を巻いていた。
4時過ぎにすべてのプログラムが終了して解散。ねこもんはレッスン室を借りて1時間ほど練習するというので、私はホテルに戻って洗濯をする。またまた受付で、例のちいボスのおじさんに小銭のクォーターないよね?と確認すると、ない!とにべもなく言うので苦笑する。また角の酒屋に行ってオレオを買い、1ドル札を両替してもらう。
ホテルに戻ってくると、ちいボスでない方の若い受付のお兄ちゃんが、鍵のスペアをもう一つ貸しましょうか?というので、このホテルに泊まるのもあと一晩だしもういらないよなぁ、と返事に迷う。でもこのお兄ちゃんの顔に、なんだかもう少しサービスしないとあんまりかも、と気を遣っているらしい表情がありありとうかんでいて、かえって気の毒になる。それで鍵のスペアをひと組受け取る。彼は、いそいそと玄関用の鍵にテープで印をしてニコニコしながら渡してくれた。なんだかこちらが良いことをしたような気分だ。
そのうちにねこもんが帰ってきて、レッスン室にドラムがものすごくたくさんあった!と興奮気味に話す。鍵のことを伝えると、「2回もタオル交換するの忘れていたし、玄関の鍵も開かなかったし、それでも全然OKとかいって怒らないし、この日本人、もしかしたらものすごく怒ってるかも!?と心配なんだね。」と解説してくれた。乾燥機を25分まわした後、二人で食事に出かける。