コンサート会場のすぐ近くのピザ屋に行こうとしていたら、道でばったりU君にあう。寮の食事に飽きてしまったとのことなので、一緒に食事に行こう、と誘って3人で出かける。店に入るときちょっといやな予感がしたのだけど、私はナスとチーズのスパゲッティ、二人にはバーベキューチキン・ピザをMサイズで注文する。サンプルを見るとMサイズでも二人で食べるのに十分すぎる大きさだ。3人ともコップがないのでペットボトルのままコーラを飲んで待っている。出前用の注文がかなり入っているらしく、調理場はいそがしそうだ。すこし時間がかかるかもしれない。コンサートの開始時刻が気になる私たちは、まだかな〜と何度か首を伸ばして調理場を見ていた。しばらくして、明るくて親切な店員のお兄ちゃんが、まずスパゲッティをガーリック・トースト味のホットドック・パンと一緒に運んでくれた。スパゲッティは6人前はあるかと思うようなボリュームで、しかも給食のゆでうどんのようなパスタに、やたらに酸っぱいケチャップ味のトマトソースとチーズがのせてあるだけのものだった。びっくりしたが、それでも「U君誘ってよかった!」などと言って、紙皿に取り分けて3人で食べ始めたところ、その店員さんがさらにでっかいピザを2切れもってきてくれて、「まだ注文ができあがるまで時間がかかるので、これで空腹をしのいでね。」のようなことを言う。出身地はスペイン語圏なのか、訛りがあってよく聞き取れなかった。それで私はてっきり、あと4切れくらい別に焼いているのかと勘違いして思っていた。このピザ屋はピザを一切れずつ焼くのか、と絶対あり得ないことを、そのときはそれほど不思議でなく思ったりする。土地に不慣れな旅行者の典型的な心理だ。
このでっかいサービス版の2切れで、U君もねこもんもすっかり満腹になってしまったのに、そのあとで注文分のMサイズのピザがどっかーんと箱に入れて運ばれてきて、全員腰を抜かしそうに驚く。店で食べるのにデリバリーと同じ箱入り、というのも驚きだ。そういえば、さっきスパゲティを取り分けるのにもらったのも、紙皿とプラスチックの小さいフォークだった。しかもMサイズでも日本のLサイズ以上のボリュームである。「どうする?これ?絶対無理だよね!?」ということで、しょうがないから、会場の受付に預かってもらおうなどと話し、ピザの箱を持って店を出る。しかし、どうかんがえてもコンサート会場の受付で食品を預かってもらえそうにないので、「ええい!ホームレスのひとにプレゼントだ〜!」などと言って、道ばたのオレンジ色のポストのようなものの上に置いて逃げる。ねこもんは、あれはゴミ箱だったと言うのだが、私にはそう見えなかった。きれいなオレンジ色のポストだった。コンサートが終了してからピザの箱がどうなったかは確認しなかったけど、あれを見付けた人は実にラッキーですよ!と無理矢理に思い込む。
私はずっとピザのことが気になってまったくコンサートに集中できなかった。とりあえず、これですべてのプログラムが終了したわけだ。
帰り道、またMarbolo Marketという店によって、地下にある地ビールコーナーをじっくり探し、その名もMayflowerという銘柄のプリマスの地ビールを買う。Aleビールです。冷やしたのはありますか?とレジで聞いたら無いとのことなので、みな常温で飲むのだろう。何だかイギリスみたいだ。さすがボストンだ!さっそくホテルの部屋で打ち上げ。ところでこのビール、実においしかったです!つまみはShaw'sで3角チップをかっておいたのでちょうどよかった。
楽しかったなぁとか、来年も来ようねとか、機嫌良くねこもんとわーわー話す。このホテルの部屋も明日には出て行くかと思うと、無性に名残惜しく感じる。
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その後約半年たったところですが、ねこもんはいつのまにかドラムはそっちのけで、最近ではバスケットボールに夢中です。身長を伸ばすのだといって、毎日天井に向かってジャンプをくりかえしています。休日も友人達と公園でバスケを楽しんでいる模様。たっぷり土産話を聞かされたパパは、来年こそ一緒にボストンに行きたいと思っているらしいのですが、はたしてどうなることでしょうか!?(おわり)