今度は反対側のボストン公共図書館(The Boston Public Library, BPL)に行く。正面入口を挟んで銅像とレリーフがあり、向かって右側はミケランジェロなどの芸術家の名前、向かって左側にはニュートンを筆頭にダーウィンなど科学者の名前が刻まれているのが興味深い。階段を登ってドアを開けると、大学図書館並みの磁気ゲートがあるだけで、かばんを預けろとも言われないし、利用手続きも特に必要ないらしい。もちろん入場料は無料だ。階段ホールは天井から床まですばらしい総大理石貼りで、2頭のライオン像がひとなつこい顔を見せている。2階にあがると中央の閲覧室の右手に大きながらんどうの部屋がある。壁に大きな絵がたくさん描かれていて、貴族の館にある居間のような雰囲気だ。入り口でちょうど掃除のおじいさんと目があったので挨拶したら、わざわざ説明について来てくれて「素晴らしいですよね。この部屋も100年以上経っていますからね。」と言うので、「この部屋は何に使われるのですか?」と訪ねると、「たまに結婚式があるときに、この部屋で披露宴が開かれます。テーブルを並べて食事をするんです。」と教えてくれた。それはきっとものすごく豪華な披露宴だろうなぁ!しかもこれが公共の場所なのだ。
中央閲覧室はBates Hallという。たくさん席が並んでいて、テーブルの緑のランプシェードと、ものすごく高い天井に目を奪われる。全体が落ち着いた内装で、周囲に木製の書架がめぐらしてある。3人掛けの席はほとんど埋まっておらず、私もその中の一つに座ってみる。隣の書架には「アメリカ大学便覧」といった本が並べてあった。早速持参のiPadを出して図書館のホームページにアクセスする。図書館案内がアーカイブにあり、すぐにPDFファイルをダウンロードして読むことができた。図書館の歴史や建築の説明などが写真入りで詳しく書いてある。所蔵図書の電子書籍化がかなり進んでいるらしく、PCの貸出しも可能で、無線LANに誰でもつなげることができるので、オンラインにある書籍なら手続きも不要でいくらでも読むことができる。
こんな立派な公立図書館は初めてです!まるで勉強スペースのある美術館といった雰囲気だ。お向かいのトリニティ教会へのあてつけでしょうか?なんとなくそんな感じがする。市民に無料で公平に開かれた図書館。しかも教会をもしのぐ豪勢な建物。このどんでん返しは本当に目から鱗だった。
それにしてもなぜホームレスの人が入ってこないのだろうか?とても不思議だ。日比谷公園の都立図書館はホームレスの仮眠室みたいな状況なのに。入り口には黒人のガードマンがひとりかふたり立っていただけだった。そこでチェックしているのだろうか?
Bates Hallを出て、ぐるっと2階をまわる回廊から中庭を見下ろすと芝生の真ん中に噴水があり、周りにはガーデン用のテーブルや椅子がいくつもあって、そこでも市民がゆったりくつろいだり、館内のレストランでテイク・アウトしたサラダなどを食べていた。PCを使っている人が何人もいる。
やっと見つけたぞ!理想の図書館!と私は無性にうれしくなる。先日わざわざ行ってみた代官山TSUTAYAとは比べものにならない。もちろんあそこは本屋だけど。インターネットに無料で繋いで、ネット上にアーカイブされている電子書籍を手持ちのタブレットまたはPCで読む。これから図書館の利用法はこういう流れになって行く予感がする。でもあの歴史を感じさせる重厚な雰囲気は、もちろんなかなか真似できないだろうなぁ。絶対明日も来よう!と思う。