大津波から3年。
脳神経外科で10年ぶりに脳のMRI検査を受けた。
最近のMRIは整形外科で撮るレントゲン写真のようなフィルムに現像されたものでなくて、パソコン上に画像が表示される。さらにMRAといって血管の3次元立体画像が、マウスを前後に動かすと頭のてっぺんから首の方まで、くるくるとあらゆる角度に連続的にスクロールできる。解像度もかなり高く、たくさんの血管がかなり細かいところまで白く写っていた。
「脳の画像には異常はありませんが、ここがね〜ちょっと。」
といいながら、医師が真剣な顔をしている。首の後ろの2本ある動脈の片方が、途中で詰まって途切れているのが私にもよくわかる。その画像を見ながら、
「脳幹の近くなんで、これ、かなりやばいです。」
と医師がいうのを聞いてちょっと背筋が凍る。
「10年前の検査では異常なしだったんですけど。」
と私がいうと、
「当時より検査技術がかなり上がってますからね。前回は見えなかっただけかもしれませんよ。」
「叔母が50代でくも膜下出血で亡くなってます。」
とまた私。
「3親等以内で特に女性同士だと危険ですよ。」
医師は小声だが物言いが断定的だ。いろいろ質問するとようやく答えてくれるタイプか。
年にときたま、何日かめまいが続くことがあり、それに加えて最近はなんとなくだるくてやる気が出ないのと、やたらに手からものを落とすことが多かった。さらに右目が夕方になると、かすんでほとんど見えなくなってしまう。左目は変わりないのだけど。これは老眼かと思ってあきらめていた。一番厄介なのは、お酒を飲むと突然記憶が飛んでしまうことだ。しばらくすればまた記憶が戻るのだけど、どうしても何も覚えていない空白の時間があり、これはもしかして認知症の始まりかと思い、念のため受診することにしたのだ。それにしても軽い気持ちで検査したのに血管が詰まっていたなんてびっくり!
「お酒を飲むと脱水になるので、余計に血の流れがどろどろして、血管の狭窄部分で流れがさらに悪くなるのが、記憶障害の原因でしょう。」
とのこと。なるほどそれで記憶が飛ぶのね!?その日は血管拡張効果のある薬というのを1週間分もらって帰宅した。
自宅に帰った後も、なんだか脳に爆弾抱えているような気がして気が重く、頭痛がしてくる。パパと息子は
「ママの酒乱にも原因があったんだね〜」
と顔を見合わせてお互いに納得しあっている。酒乱呼ばわりするなんて失礼だ。ときたま記憶がないときに、(息子の証言によれば)ものを投げたり暴言を吐いたりしてただけなのに。パパにいわせると「それがまさしく酒乱だ。」とのこと。
その日たまたま電話をくれた友人に愚痴を言うと、彼女もずっと血圧降下剤を飲んでいるとのこと。女の人たちは50歳前後でみんなあちこち病んでいるのね。血管拡張剤の話をすると、
「みんなバファリンみたいな感覚で飲んでるんだから、ぜんぜん大丈夫よ〜!」
といって励ましてくれた。
でもこのプレタールという薬、バファリンとはぜんぜん違ってました!
とにかく飲んだらものすごい頭痛。何も手に付かないほどのひどい頭痛が、左の頭にガンガンガンとハンマーで殴られたようにあり、この陣痛のような頭痛がバファリン飲んでも治らないのだ。夜も痛みで眠れない。食物の味もわからない。金曜日と土曜日の2日間我慢して飲んだけど、バファリン飲むために薬もらってきたみたいだ。
乾いた洗濯物の山の前に頭を抱えてしゃがみ込んでいる私を見て、さすがに家族も
「その薬変えてもらった方がいいよ。」
というので月曜日にまた脳神経外科を受診することになる。