iPhotoにたまっている写真がパソコン3台に分散しているのを整理し、頭痛をロキソニンでこらえ、新しく買う単焦点レンズの品定めをしているうち、5月も終わってしまう。気温は毎日30℃を超えるようになり、からっと晴れた真っ青な空を見ていると、しきりに鎌倉に行きたくなる。
6月に入り、注文していた28mm単焦点レンズが届いた。マニュアルフォーカスだ。うちの庭や近所で少し練習を積む。思ったよりとてもいいレンズだった。まず色彩の奥行が以前買ったオートフォーカス・レンズよりもう一段深いという印象。もちろんピントが合えばの話だけど。
明日から雨になる予報だったので、今日しかない!と決意して北鎌倉へ出かけた。古民家ミュージアムでヤマアジサイの展示を見た後、明月院まで足を伸ばし、その後暑さでへばりそうになったが、がんばって東慶寺へ行く。明月院ではまだアジサイは咲きはじめだったけど、おかげで人が少なくて写真が撮りやすいのだ。一眼レフを持った人が5人ほど、それぞれ一人で来て写真を撮っていた。東慶寺にはひんやりと涼しい風が吹き、ベンチがわりの木の切り株に座って水筒の水を飲んだらとてもすっきりした。それにしても鎌倉は鶯の声、ホトトギスの声、などなど、野鳥の声が本当にすばらしい。200枚くらい写真を撮ったところ、最後はカメラのバッテリーがなくなる。
この日はどれくらい歩いただろう。往復の電車の時間を入れても4時間ちょっとの強行軍だった。とにかく久しぶりに帰りの電車の中で足が棒になる。しかもその夜は3月にMRI検査を受けて以来、はじめてと言って良いほどぐっすり眠れたのだ!私の不眠症は鎌倉散歩で解決する!これはうれしい発見だった。
6月は繰り返しの豪雨。隅田川や目黒川があふれそうな大雨が降った日も、私はぐっすり寝ていて雨の音が気にならなかった。ついこの前まであれほど眠れなかったのがうそかと思うほどだ。そうこうしているうちに、半年前から計画していた2度目のボストン旅行が目前に迫ってきた。いつもの脳神経外科で、医師にそのことを伝える。
「仕事ですか?」
と医師が心配そうに訪ねるので、
「半分仕事みたいなものです。」
と答える。12時間飛行機に乗ることを伝えると、
「う〜ん、だいじょうぶかな〜」
といって医師がなにやら考え込んでいる。いったい何を心配しているのだろう、と思っていると、やおら真剣に、
「VISAカードについていたと思うよ。」というので、何が?と思ったら
「海外旅行保険。」
ああ、そうか!このひとアメリカで私が万が一入院したときの費用のことを心配しているんだ!と気づいてちょっと笑いをこらえる。医者というより、まるで親戚のひとみたいだ。
「大丈夫ですよ。旅行保険ついてます。」
といって安心してもらった。
念のため漢方薬局の先生とも話をしにいく。相変わらず4週間に一度脳神経外科を受診していると言うと、
「医者のいう経過観察というやつは、ようするに悪くなるのを待ってるのよ。それでいよいよ悪くなると、『やっぱりわるくなりましたね〜』って言われるの。」
と言うので大笑いになる。先生はさらに
「ボストンでもどこへでもいっといで〜!」
と笑って送り出してくれた。
今回のボストン行きは去年の息子との二人旅に引き続いての二度目だということもあり、さらに夫も一緒に行ってくれることでもあり、私はまったく心配していなかったが、エコノミー症候群だけには十分気をつけよう。ある友人は心配して、「禁酒!ってパスポートに書いといて〜」と電話してきてくれた。それより食べ過ぎて、コレステロール値が上がらないように気をつけなきゃ、と思いながら、ブラピと漢方薬をスーツケースに入れる。
その後、8日間のボストン旅行から帰国して、自宅で測ってみたところ、驚いたことに体重が減っていた。今回は知人のマンションを1週間借りて、食事は近所のスーパーで買い出しして主に自炊していた。とはいえ、酒屋で上等のカリフォルニア・ワインを買って来て毎晩飲んでいたし、サミュエル・アダムズという地ビールもおいしく、いつのまにか禁酒の誓いはどこかへ消え失せてしまっていた。5Napkin Burgerというレストランが気に入って夫と二人で2回もでかけ、8オンスもあるでっかいハンバーガーも食べた。それで心配していたのだが杞憂だった!そのことを伝えると、息子は「ストレスじゃん?」とにべもなく答えた。私のストレスの原因の99%以上を占めるストレスのパン種のような息子に言われて、私は返す言葉もなかった。(つづく)